ピアスの歴史:古代マヤ文明

最終更新: 2026-06-26

歴史 マヤ

古代マヤの装身具を見ていると、ピアスは単なる飾りではなかったことが伝わってきます。耳だけでなく、唇や鼻中隔、鼻などにもピアスを開け、身につけるジュエリーには、身分や役割、信仰の世界観まで映し出すような意味が込められていました。

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マヤ文明は、現在のメキシコ、グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラスにまたがり、3,000年以上にわたって続いた広大な文明です。そのぶん、ピアスのスタイルや慣習も、時代・地域・階層・儀礼の場面によってさまざまです。今回は、専門的な全体像ではなく、気になる方のための入口として、特に印象的なポイントをいくつか紹介します。

翡翠と身体:見せるジュエリー

マヤの支配層にとって、翡翠のイヤーフレアは、身につけられるものの中でも特に重要な存在でした。両端がラッパ状に広がった筒状で、真ん中に穴のある装身具(イヤーフレア)を、拡張した耳たぶの穴にはめて装着します。大きいものも多く、遠くからでも目立つ存在でした。

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翡翠、とくに硬玉(ジェダイト)は、ほかの文化における金に近い意味を担っていたと考えられています。トウモロコシや水、若い太陽、生命そのものを思わせる色。そのため、気軽な装飾というより、自分のアイデンティティーを示すものとして身につけられていました。

ティカル遺跡の翡翠イヤーフレアに関する研究では、時代が下るにつれて支配層の形式がより標準化する一方、技術的には複雑さを増していったことが示されています。研究者の中には、翡翠イヤーフレアが通貨に近い地位を持っていたと表現する人もいます。価値があるだけでなく、その価値を身体の上で最大限に見せるための存在だった、ということです。

イヤーフレアの付け方

ニューヨークのメトロポリタン美術館には、3〜9世紀頃のマヤの翡翠イヤーフレアが所蔵されており、どのように固定していたかの記録も残っています。

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中心の軸にビーズ状のカウンターウェイト(重り)を通し、耳たぶの後ろ側で垂らして支えるものもあれば、L字型のプラグ(木製だった可能性が高い)を後ろから差し込んで、円盤を耳にぴったり沿わせる方法もありました。

またメトロポリタン美術館の解説では、イヤーフレアの中央の開口部(穴)そのものが、比喩的に重要だった可能性にも触れられています。マヤのヒエログリフでは、死を表す定型表現として、蛇がイヤーフレアに飛び込む図が描かれることがあり、装身具が人間世界と超自然的な世界をつなぐ入口のように扱われていたことがうかがえます。

階層と素材

もちろん、誰もが翡翠を身につけられたわけではありません。非支配層のイヤーフレアや耳飾りは、陶器や粘土、木、あるいは有機素材で作られていました。形は支配層の翡翠の作品を思わせるものも多く、素材が違っても、理想とされる姿は共有されていたように見えます。

こうした翡翠と粘土の差は、埋葬の文脈でも一貫して確認されています。死後に身につけた素材が、生前の立場を語っていたのです。

耳以外でも、男女ともにラブレット(唇のプラグ)を身につける例がありました。鼻中隔のピアスにターコイズや翡翠のノーズプラグを通す装いは、高い地位の戦士や支配者の「印」として用いられたと考えられています。

また『ナッタル絵文書(Codex Nuttall)』には、11世紀のミシュテカの君主、8鹿・虎の爪(Eight Deer Tiger Claw)が、征服儀礼の一環として鼻中隔を穿孔し、ターコイズのノーズプラグを装着する場面が描かれています。ここでは、ピアッシングそのものが儀礼の行為でした。

Codex Zouche Nuttall Lord 8 Deer gets pierced

儀礼としてのピアスと血

マヤには、装飾のためのピアスとは別に、血を捧げる儀礼(自己瀉血)の実践もありました。黒曜石の刃やエイの棘、棘などを用い、血を捧げるために耳や舌、唇などに傷をつけたとされます。とくに支配者の血は強い力を持つと考えられていました。

装飾としてのピアスと、儀礼としての穿刺。2つは同じ文化の中で共存し、ときには同じ身体の上で交差していたのです。

MAYのこだわり

マヤが示していた、素材選びには意志が出るという感覚は、現代のボディピアスにも通じます。翡翠が選ばれたのは、身体にふさわしい素材だったからです。希少で、安定していて、象徴性も強い。そうした条件を満たしていました。

MAYでは、神秘的な意味づけというより、実用的な理由から、インプラントグレードチタン(ASTM F136)やインプラントグレードスチール(ASTM F138)をおすすめしています。人体組織との相性がよいことが確認されている素材だからです。

そしてもうひとつ触れておきたいのが、ガラスジュエリーです。ここで少し面白いのは、マヤの儀礼で使われた黒曜石も火山性のガラスだったという点です。現代のガラスジュエリーは、非多孔質で化学的に安定しており、治癒中の組織にもやさしい素材として知られています。

身体の中に入れるものは、きちんと選ぶ。この考え方は、近代の冶金技術よりもずっと前から、すでに共有されていたのかもしれません。

シングルストーンアイレット
GG care - glass
 プリンセスバレットアイレット

「ピアスの歴史」シリーズの次回は、古代エジプトのピアスジュエリーです。人類史の中でも屈指の装飾文化が、ほぼ1つのピアス部位を中心に発展していった背景を追います。