ボディピアスジュエリー:プラグ・アイレット入門


プラグとアイレットは、拡張ピアスの代表的な2つのスタイルです。プラグは中身が詰まったソリッド形状、アイレットは中が空洞のトンネル形状。どちらもホールのサイズを維持するためのジュエリーで、素材やデザイン、端が少し広がった「フレア」と呼ばれる部分の形状に、さまざまなバリエーションがあります。それぞれの特徴を理解しておけば、自分の耳とライフスタイルに合ったつけ心地とデザインを選びやすくなります。
プラグ:拡張ピアスに最適なソリッド形状
プラグは、拡張したピアスホールを埋めるソリッド(中身の詰まった)タイプのジュエリーです。大きめのゲージを維持するときに最もよく選ばれます。形は円形が基本ですが、ティアドロップ(しずく型)やその他のカスタム形状もあります。素材も金属、ガラス、木材、天然石、シリコンなど、幅広く作られています。

ソリッド構造のため、同じゲージ・同じ形のアイレットと比べると重くなります。このしっかりした重みを好む人もいます。ゲージが大きくなるほど、重さの違いははっきりと感じられます。
アイレット:軽量で中空のトンネル形状ジュエリー
アイレット(イヤレット、トンネルとも呼ばれます)は、両端にフレアがついた中空のトンネル形状ジュエリーです。中心が空洞のため、ホールの向こう側が見えたり、中に別のジュエリーを通したりでき、筒ならではの見せ方が楽しめます。拡張したホールのサイズを維持しつつ、重さを抑えたい人に適したデザインです。

中空構造のため、アイレットはソリッドなプラグよりもかなり軽量です。ゲージが大きくなるほど、この軽さの違いは重要になります。プロのピアッサーは、拡張サイズを維持しつつ重いジュエリーを避けたい人に、アイレットを勧めることがよくあります。特に大きめのサイズでは、軽量なジュエリーの方が長時間の装着でも快適という声が多く聞かれます。
またアイレットは、中空部分に小さなチャームや装飾パーツ、リングなどを入れることができ、自分らしいカスタマイズを楽しみやすいスタイルです。
ダブルフレアデザイン
ダブルフレアのプラグやアイレットは、両端が広がったフレア形状です。フレア部分がホールに引っかかることで、Oリングを使わなくても抜け落ちにくくなります。一方で、このフレアをホールの中へ通す必要があるため、ジュエリー本体のゲージとまったく同じサイズのホールでは足りません。実際には、ホールを少し大きめ(通常は1サイズ大きめ)に拡張することが多いです。

中央部分はフレアより細くなっているため、そこまで入ってしまえばフレアによってしっかりホールドしてくれます。ただ本来は、フレアが通るだけの余裕が出るまで、ホールの組織を段階的にゆっくり伸ばしておく必要があります。プロのピアッサーがよく経験するトラブルは、この準備ができていない状態でダブルフレアジュエリーを無理に押し込んでしまうケースで、その結果として痛みや炎症が起こりやすくなります。挿入前には、ホールのサイズがジュエリーに対して適切かどうかを必ず確認しましょう。
シングルフレアデザイン
シングルフレアのプラグやアイレットは、片側だけがフレアで、反対側はストレート形状です。ストレート側にゴムやシリコン製のOリングをはめて固定します。フレアを片側だけ通せばよいため、ダブルフレアより装着が簡単です。Oリングでしっかり固定しながら、付け替えやクリーニングもしやすい構造です。

シングルフレアは、ジュエリーを頻繁に付け替える人に向いています。Oリングは取り外して洗え、ストレート側にはOリングがずれにくいよう浅い溝が入っている場合もあります。両側に大きなフレアを通せるほどホールを広げなくても、ダブルフレアに近い見た目が楽しめます。
ストレート(ノンフレア)デザイン
ストレートプラグやストレートアイレット(ノンフレアプラグとも呼ばれます)は、両端にフレアのないまっすぐな筒状のジュエリーです。両端にOリングをはめて固定します。端の近くに浅い溝が刻まれているタイプでは、その溝にOリングがかかることで、ずれにくくしっかりフィットします。

素材選びのポイント

プラグとアイレットは、さまざまな素材で作られており、それぞれ異なる特徴があります。金属では、機械加工されたインプラントグレードのステンレススチールやチタンが代表的です。ガラス製のプラグやアイレットは、表面がなめらかでつけ心地がよく、お手入れも比較的簡単です。木材や天然石は自然な見た目が魅力ですが、水分を吸収しやすいため、きちんと乾かして管理しないと細菌が繁殖しやすくなります。
アイレットをインプラントグレードのチタンやスチールのパイプから作れるのか、と質問されることがあります。実際には、ASTM や ISO による認証を受けたインプラントグレードのステンレススチール(F136/F138)やチタンは、常にソリッドな素材として供給されます。そのため、あらかじめ中空になったチューブ材から形を取るのではなく、ソリッド素材を機械加工してプラグやアイレットの形に仕上げる必要があります。この工程によって、ジュエリーの内側までなめらかに仕上がり、フレアのサイズもピアスホールに合わせて正確に整えることができます。
シリコン製のプラグやアイレットは、柔らかく軽量で、長時間の装着でも快適に過ごしやすい素材です。プロのピアッサーの現場では、人々が自分のライフスタイルに合わせて素材を選ぶ様子がよく見られます。たとえば木材や天然石は、水分を含みやすいため乾いた状態を保つよう注意深いケアが必要ですが、金属やガラスは洗浄や乾燥がしやすく、比較的手間をかけずに管理できます。
アクリル製のジュエリーは、いかなるピアスホールにもおすすめできません。アクリルは体温によって劣化しやすく、その過程で肌にとって望ましくない成分が放出されるおそれがあるためです。安心して快適に使い続けるためには、アクリルは避け、身体との相性が確認されている素材を選ぶのが最善です。
アイレットに別のジュエリーを通して楽しむ


アイレットならではの楽しみ方のひとつが、中空の中心部分にリングなどの別のジュエリーを通すアレンジです。キャプティブビーズリングなどのリングタイプや、小さな装飾パーツをトンネルの中に通すことで、ソリッドプラグではできない組み合わせのスタイルが楽しめます。
ただし、そのためにはアイレットの長さよりも大きな直径のリングが必要になります。小さいゲージサイズのアイレットでは、中心を通せるだけの大きさを持つリングを見つけるのが難しいこともあります。特に6ゲージより細いサイズでは、リングの直径が足りなくなりがちです。一方で、ゲージが大きくなるほど選べるリングの幅も広がり、コーディネートのバリエーションも増えていきます。
自分に合った選び方のポイント
プラグやアイレットを選ぶときは、次のポイントを意識してみてください。
- 重さの好み:ホールをしっかり満たす重みのあるプラグか、より軽くて向こう側が見えるアイレットか
- フレアのスタイル:ダブルフレアのようにしっかりホールドするかわりに、やや大きめのホールサイズが必要なタイプにするか、装着しやすいシングルフレアにするか、いちばんシンプルなストレートタイプにするか
- 素材:つけ心地や、お手入れの頻度・しやすさ、見た目の印象に関わります
- 長さとゲージ:アイレットの場合、長さによって中に別のジュエリーを通せるかどうかが決まります
- 形のバリエーション:円形にくわえて、ティアドロップ型やカスタム形状など、ホールの見え方を変えられる選択肢があります
プロのピアッサーのあいだでは、ジュエリーを無理に押し込んでしまい、その刺激でホールに炎症や違和感が出てしまうケースがよく知られています。また、ライフスタイルに合わない素材を選んでしまい、トラブルにつながることもあります。たとえば、いつも湿った環境にいるのに木製ジュエリーを常用すると、細菌が増えやすくなります。
自分がどのくらいの重さやつけ心地を心地よいと感じるか、どの程度のお手入れなら無理なく続けられるかをイメージしながら、サイズや素材を選んでいくことが大切です。
MAYのこだわり



MAYでは、プラグやアイレットづくりに必要な条件を理解しているメーカーとだけパートナーシップを結んでいます。拡張したホールを無理なく支えられるよう、フレアのサイズや形状が適切に仕上がっていること、日常的な使用でも組織に余計な負担をかけないことを重視しています。ソリッドなプラグと中空のアイレットのどちらも、そしてダブルフレア・シングルフレア・ストレートといったスタイルをそろえることで、ひとりひとりの好みや生活に合う選択肢を用意したいと考えています。
パートナーとなるメーカーには、ジュエリーの耐久性テストやフレアサイズの精度管理なども求めています。アイレットであれば、壁の厚みが一定で、内側の表面がなめらかであること。プラグであれば、ソリッド構造が安定していて、実際に身につけたときの重さのバランスが適切であること。こうした細部への気配りが、拡張したホールのサイズを心地よく保ちながら、その人に合った見せ方や組み合わせの幅を広げてくれるジュエリーにつながっていきます。
次回は、プラグやアイレットのホールを育てていくうえで欠かせない拡張のステップと休息期間について、実際のトラブル例も交えながらお話ししていく予定です。